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“春の土用”は“土いじり”の時期 [ファーマシーの食養]

 “夏の土用”は皆さんご存知でしょうが、実は“土用”は年に4回訪れ、季節の変わり目を言います。
 “春の土用”は、24節季の一つ「穀雨」の3日前、4月17日頃に始まって、「立夏」の前日、5月4日頃までです。始まりの日が中途半端ですが、何故そうなっているのかと申しますと、1年365日を季節の5区分<春・夏・土用・秋・冬>で均等に割り振り、それぞれ73日とし、土用は4回来ますから、4で割った18日を春・夏・秋・冬の後に入れ込むのを基本とする、というものです。
 では、何故に“土用”が定められているのかですが、薬屋という仕事柄、中医学(俗に「漢方」)を少々勉強し、どれだけか知っておりますので、ご紹介しましょう。
 
 まず、24節季ですが、これは太古の昔、中国で、農業暦として定められたもので、中国中心部の気候に合ったものになっています。日本では、関東平野以西から九州までの平野部に概ね合うことでしょう。
 そして、季節の変わり目の頃に、畑を耕したり作物を植え付けたりと、“土いじり”することが多くなりますから、”土用”というものが定められたと考えられます。
 さて、ここからが凄いのですが、古代漢民族は、この“土用”を、身体の健康と結びつけたのです。

 中医学に明確に定められているのですが、まず、古代漢民族は、ことのほか「5」にこだわり、何でも5分類してしまい、季節は、春・夏・土用・秋・冬の5つ(ただし、土用は4つの季節の間にそれぞれ入りますから実質上は、8区分ですが、4つの土用を1つにまとめて5分類)、そして、健康に関することも、全て5分類します。
 主要臓器は、肝・心・脾・肺・腎の5つですが、肝は肝臓というふうに、その臓器をドンぴしゃり指すものではないものの、概ねそうだと考えて差し支えありません。ただし、脾は脾臓ではなくて膵臓を指すのですが、腑に分類され脾に密接な「胃」だと考えた方が理解しやすいでしょう。
 この主要5臓器がそれぞれの季節に対応します。肝は春・心は夏・脾(胃)は土用・肺は秋・腎は冬と密接な関連にあって、その時期に中心的に働いてくれ、生体を維持する上で特に注意せねばならない臓器となります。
 これは、屋外で重労働する農民にぴったり合ったものでして、また、原始時代は、それに似た生活であったことでしょう。よって、ヒトの生理機構は、これに沿ったものになっているはずですから、農民以外の支配階層にも適用でき、そして、今日の我々にも適用できるものになっていると考えられます。
 
 次に、自然界に存在する主要な物(木・火・土・金・水)と主要臓器(肝・心・脾・肺・腎)が、それぞれ対応し、土用にあっては、土と脾が密接な関係にあることになります。ちなみに、春は木で肝臓が、夏は火で心臓が、それぞれ関係します。なお、金はゴールドではなく、金属を言い、鉱石や岩石も含むとして良いです。
 先に述べましたように、土用は土いじりの時期で、特に春の土用は、夏野菜の植え付けやその準備で、大忙しとなります。つまり、農繁期です。その時期に、脾つまり胃が活躍してくれます。連日の重労働に備えて、食べ物からのエネルギーの生産、つまり、消化吸収を促進しなければならないからです。
 では、どんな栄養を摂らねばならないのか。これについては、味を重視するのが中医学の特徴です。いわゆる5味です。順に、酸・苦・甘・辛・塩の5つで、土用は3つ目ですから、甘味を特に必要とします。力仕事をすると甘い物が欲しくなることからも納得できます。ですが、ご飯だって良く噛めば甘味がでてきますから、炭水化物全般が必要とされましょう。
 なお、味の3用というのがありまして、脾に甘味だけではありません。脾を益する塩味、脾を助ける辛味を添えるとバランスが整うというものです。通称、隠し味と呼ばれ、日本料理で盛んに使われています。
 春の土用で連日百姓仕事をするのであれば、腹が空きますから、ご飯(甘味)をもう一杯、辛子明太子(塩味と辛味)でも乗せて、お茶漬けでも食べるのが良いと言うことになります。
 これは、理にかなったもので、汗をかく時期になりますから、塩分が必要ですし、辛味が食欲を増進することは、皆さんご存知のとおりです。

 そして、この時期に注意せねばならない気象は、湿気です。土いじりすれば、地中の湿り気が地表に現れ、太陽の熱で蒸発し、それを直接的に吸うのですから、湿気過剰となりましょう。特に、この時期に、湿気に長時間晒されると体調を崩しやすくなります。この要注意の気象、これは5悪と表現されますが、順に、風・熱・湿・燥・寒で、土用は3つ目ですから、ちゃんと湿に対応しています。
 今年は、4月に入ってから毎日のように雨が降り、畑が随分と湿っていますから、湿気を吸いすぎないよう注意したいものです。

 もう一つ付け加えるならば、5つの感情、怒・喜・思・憂・恐、これは5志と呼ばれていますが、土用は3つ目の「思」に対応します。いろいろと思いを巡らせなければならない季節なのです。
 特に、春の土用は、夏野菜の苗の生長ぐあいを見定めて植え付け時期を考えたり、連作障害が出ないように植えつけ場所を選択したりと、思考回路を十分に働かさなければなりません。
 百姓仕事をしている小生も、これからの時期、努めて連作障害を避けるための理想的な作付け場所の決定に迫られそうです。青写真は出来ていますが、しかし、作業効率を考え合わせると、一部手直ししたいと考えたりして、当分の間、思いを巡らせることになりそうですし、また、頭を悩ませることになりそうです。加えて、作付けが終わった後でも、あれで良かったのかどうか、こうすべきではなかったのかとか、頭が混乱しないとも限りません。
 これが高ずると、いわゆる「5月病」になります。百姓仕事でも5月病になるのですから、デスクワークの仕事となると、格段に思い悩むことが多くなりましょうから、「5月病」になるのは必至でしょうね。春の土用には、「脾」つまり胃を病んで、胃が痛くなり、食欲が失せ、「思」が思うように働かなくなり、やがて、鬱(うつ)になるのも、うなずけます。
 
 百姓仕事を中心にして、中医学の基本を述べてまいりましたが、詳細については、小生の別立てgooブログ「薬屋の…」の「漢方栄養学」に書いておりますので、興味を持たれた方は、一度覗いてみてください。なお、5月5日頃の立夏以降は季節は夏になり、その時期の食養生法も、そのブログでご覧いただけます。

冬には冬野菜を。淡色野菜、白物野菜は免疫力を高めます。 [ファーマシーの食養]

 “冬には毎日冬野菜を大いに食しましょう。”
 その冬野菜の薬効はいかに。
 全てが「体を温める」食品で、生よりも火を通せば、より効果がでます。つまり、季節には季節の野菜を食べるのが基本ということになります。
 霜柱が立ち、凍てついた大地に凛凛(りんりん)と突っ立っている大根を見るたびに、その素足の美しさに惚れ惚れするのですが、氷点下になっても壊死することのない、その生命力が、これを食する我々ヒトにも与えられ、つまり、体を温めてくれるのです。
 大自然に感謝したいものです。

 この書き出しで、2014年11月に記事を起こしたのですが、2018年1月に別立てブログ「薬屋の…」で、改訂版を投稿し、淡色野菜、白物野菜が免疫力を高めることを少々詳しく解説しました。
 下にリンクを張っておきますので、ご覧いただければ幸いです。
 冬場の淡色野菜・白物野菜はすぐれもの、薬効多し

 なお、本稿の2014年11月投稿記事の続きは以下に残すこととします。
 一方で、随分と昔から夏野菜も年中出回っていますが、これは体をグーンと冷やしますから、冬場は食べないようにしたいです。
 でも、火を通せば、冷やす力をかなり殺すことができますので、トマトを食べたいのなら、蒸したり煮たりしてから食べてください。野菜サラダを毎日食べたいという方は、温野菜になさってください。また、生野菜ジュースは飲まないにこしたことはないです。これも、野菜スープにした方がいいです。
 そして、キュウリやナスの漬物はごく少量とし、冬場はカブや大根の漬物中心としたいです。漬物は発酵食品で、酸っぱさは乳酸菌などによる有機酸ですから、質のいい栄養と言えます。
 また、漬物には塩が付き物ですが、減塩に神経質になるのは考えものです。塩は必須のもので、特に冬場は多少多めでも良いのです。塩分は、体をグーンと温め、腎臓や生殖器の働きを高めてくれるのです。

 もう1、2点、お話しておきましょう。
 大根、カブ、ハクサイ、キャベツ、白ネギなどなど、冬野菜には、白色、淡色のものが多いです。
 栄養価から言えば、たしかにビタミン、ミネラルは、緑黄色野菜に比べれば落ちます。
 でも、野菜(夏冬ともに)の白色、淡色部は白血球を活性化させ、免疫力を高めるという働きを持っていますから、馬鹿にしないでくださいね。風邪の予防になります。
 次に、ネギ。これは、冬野菜の王様と言えましょう。
 ネギは、白色と緑色の両方からなっていて、幅広い働きがあるのはもとより、低カロリーで、体を温める力がたいそう大きいです。
 一言で言えば、「マイナスのカロリー食品」です。摂取したカロリー以上にカロリーを燃やしてくれるからです。冬にダイエットをしたい方は、毎食ネギをたくさんお召し上がりください。
 なお、ネギにはミネラルのセレンが多く含まれ、セレンは有害金属を排泄する力がありますから、「毒だし」にも最適な食品です。特に水銀の排出力が強いですから、マグロなどの大型魚(食物連鎖で水銀を高含有)を食べるときはネギも一緒にどうぞ。ネギトロは、その生活の知恵でしょうね。
 ところで、スーパーに並んでいる綺麗なネギは、白根の部分が乾燥して硬くなっています。買うのであれば、直売所などで泥付きのネギを求めたいものです。一皮剥けば綺麗になり、白根もきっと柔らかいでしょう。もっとも産地によりけりでして、我が「徳田ねぎ」のように甘くて柔らかいネギは少ないようですが、それでも、スーパーの綺麗なネギとは全然違いますよ。また、泥付きネギは保存が利きます。庭なり、大きめのプランターなりに、白根の部分を斜めに埋め込んでおき、必要な分だけ取り出して使うのです。これで、冬季は2、3週間程度は柔らかさが保てます。

 最後に、有機肥料栽培か、無農薬・減農薬か、について。
 市場に出回っているものは、化成肥料などの化学肥料中心の施肥ですから、成長速度が早く、大きく成長し、見た目にもいいです。その分、栄養価が低くなりましょうし、甘味・うまみも減ります。
 ひどいものになると、窒素肥料過剰で苦味があるものまで売られています。肥料がまだそのまま葉っぱや根っこに残ったままの状態にあるのです。ホウレンソウ、大根、キャベツ、ハクサイで苦味を感じたら、肥料過剰だと思って間違いないでしょう。もっとも、昔からの品種で原種の性質を引き継いでいるもののなかには初めから苦味があるものもありますが、まずこうしたものは一般市場に流通していません。
 なお、ネギの場合ですが、最後の追肥を少々多めにすると、葉っぱの折れが減りますし、青々してきて見た目が良くなりますから、そうしたものが市場に出回ります。これは、「徳田ねぎ」でも同様で、葉っぱも根も硬くなりますし、甘味・うまみも減ります。
 こうしたことから、うちでは化学肥料は使わず、有機肥料を何種類か組み合わせて栽培しています。有機肥料の欠点は、値が張ることと施肥が面倒なことです。よって、利益を上げるには適しませんが、うちでは自家消費や当店のお客様に差し上げるだけですから、化学肥料は苦土石灰だけにしています。

 無農薬・減農薬については、国産のものであれば、さほど気にすることはないと思われます。大産地であっても、自主規制でもって毒性が弱く、残留性の少ないものを使っていますからね。といっても、虫が付いたものや葉に食われた跡があるものは一部の消費者が拒否反応を示しますから、残留性なしとはまいらず、どれだけかは農薬が残っていると考えねばなりません。
 なお、都市近郊の直売場で売られているものの方が、場合によっては農薬がきついのではないかと思われます。人の往来、車の往来が多いほど病原菌の拡散も多いですから、何種類もの農薬を多用せねばならない傾向にあるからです。
 うちでは、最近は、まず無農薬で育成を始め、どうしようもなくなったら農薬を使うという方法を取っています。今年の冬野菜は今のところ無農薬です。ハクサイ、キャベツは、葉っぱがけっこう虫食いだらけですが、農薬使用は我慢。年内は無農薬でいけそうです。ただし、これらは立春すぎに農薬噴霧が必要になるかもしれません。
 キャベツは自家消費できますが、ハクサイの半分はお客様にもらっていただかねばならず、“虫がいるかも。よかったら持って行って”と、断って差し上げています。

 多少見た目が悪く、虫食いもある野菜、それも、待たされて手に入るという旬の野菜、こうした野菜が本当の野菜ではないでしょうか。
 有機肥料栽培で無農薬となると、こうしたものになる傾向が大です。うちでは、こうした野菜を毎日食べ、いつも美味しくいただいています。そして、一部をお客様にお裾分け。
 まだまだ素人の域を脱しない小生です。これから自然農法なども勉強し、より病気に強い野菜づくり、より美味しい野菜づくりを毎年毎年少しずつ進めていきたいと思っているところです。

<2014年11月27日>
 うちの畑の冬野菜がそろそろ収穫本番となってきました。
 冬野菜は、ほんとに寒なってから収穫できるように、なるべく遅蒔き、遅植えしていますので、まだ収穫できそうにないものもありますが、それでも何とか食べられる大きさになってきました。
 今年の現況は次のとおりです。
 ビタミン大根:1か月前から順次収穫中で残り半分に。
 大根:少々成長遅れで、収穫はもう少し先。
     (11月29日、2本初収穫)
 キャベツ:1玉だけそろそろ収穫可能だが他は春までダメ。
       (11月29日、小振りだが1株初収穫)
 ハクサイ:第1弾が芽吹かず、第2弾が成長中で、まだ十分に巻いていない。
 カブ:収穫可能だが、もう少し大きくなるまで待とう。
    (11月29日、十分に大きくなっていた1株を初収穫)
 カリフラワー:順次収穫中。
 ブロッコリー:まもなく順次収穫可能。
         (11月29日、十分に大きくなっていた1株を初収穫)
 ホウレンソウ:第1弾が芽吹かず、第2弾が成長中だが、年明け後あるいは春の収穫となりそう。
 小松菜:11月24日、大きそうなものから収穫を始めた。
 菊菜:そろそろ大きそうなものから収穫可能。
     (11月30日、初収穫)
 徳田ねぎ:夏の多雨で成長が遅れていたが、ここに来てリンリンしてきた。まだまだこれから長くもなり太くもなるだろうが、そろそろ収穫可能となった。
 (11月29日、少しだけ初収穫)
 ニンジン:これは秋から収穫中で終盤に入った。
<11月30日撮影:主な冬野菜区画>
上から順に ネギ4畝
        大根3畝(ビタミン大根2、青首大根1)
        ハクサイ(防虫ネット)
        ハクサイ(ネットなし)
        キャベツ((防虫ネット)
        遅蒔き大根
        キャベツ(ネットなし)
DSCN0365.JPG

 このように、今年も冬野菜の収穫を楽しみにしているところです。


野菜何もかも煮物にする日本文化、でも肉を食べるときに生野菜を食べるのはなぜ? [ファーマシーの食養]

(別立てブログ「薬屋の…」で8月22日に記事にしたものをこのブログで再掲します。)

 近代医学が発展するなかで、ヒトの食に関して酵素の重要性が次々と明らかになり、植物が持っている様々な酵素を生きたままで取り入れる必要性が各方面から強く言われるようになった今日です。このブログでも、ヒトが健康でいられ、難病を治療するにも、生菜食ほど肝腎なものは他にない、そのような記事を幾つか書いてきました。

 ヒト本来の食性は動物と同様に「火食」にあらず。 「火食」つまり煮たり焼いたり蒸したりして熱変性させた食べ物は死んだ食べ物であり、酵素の多くは変性して活性を失うし、ビタミンやフィトケミカル(必須栄養素ではないが、ヒトの健康に好影響を与える植物由来の化合物全般)の一部も同様である。よって、野菜は生食すべし。

 というものです。加えて、水についても、煮沸した水は水分子の物理的結合状態が自然界にない状態に構造変化しており、生水を飲むべし、と言われたりします。
 たしかに生菜食&生水でもって難病が治癒する例が非常に多いですから、これは一理あると言えましょう。普通の人にとって玄米菜食は素晴らしい健康食ですが、火を通したものであっては難病を治癒させる力はないようで、玄米は生を粉にしたもの、野菜は全部ジューサーで細かくしてドロドロにしたもの、これを食することで治る効果がグーンとあがるようですから、やはり、「生」の力は相当なものがありましょう。

 しかしながら、まず最初に「生水がいいかどうか」を考えてみますと、全ての水は煮沸して飲むというインド人の食文化、これであっても超健康が維持される(例えば、煮沸した水だけ飲んで411日間も断食できたインド人が2人いる)のですから、生水でなければいけないとは決して言い切れません。
 そして、芋類については生のままではベータ・デンプン(※)ゆえに消化ができず、煮たり蒸したりしてアルファ・デンプンに変性させて初めて容易に消化できるようになり、火食するのが大前提となります。
(注)※ベータ・デンプンはヒトの消化酵素では分解できないとされていますが、現実には思いのほか消化できるようです。参照→http://www.kaiten.jp/syokuji/beta.html 
 ほとんど芋しか食べないニューギニアの高地民族なのですが、すさまじいほどの“芋力(いもぢから)”でもって、重い荷物を背負っていても駆け足で山を登っていくのですから、これには驚かされます。その彼らの日常の食事は、芋に時々野菜を少々加えて蒸した貧相なもので、完全な火食であって生菜食しないのです。なお、彼らは豚を飼っていますが、これは冠婚葬祭のときに丸焼き(蒸し)にして食べるだけです。果物が少ない土地柄ですから、生食は全くしないと言ってもいいです。
 これは多くの採集狩猟民にも当てはまり、ほとんどが火食です。なお、通常、彼らの動物食は全体の3割程度で、芋が主食となっており、野菜は少々といったところで、いずれも火を通しています。その彼らが皆、イキイキ元気なのは申すまでもありません。もっとも、果物やウリ類が採れる場合は生食しているようですが、これは生水代わりでしょう。

 さて、日本人はどうでしょうか。日本列島に2万年前に最初に住みついた縄文人は、この地の野山に堅果類が極めて豊富でしたから、ドングリから始まってその後クリやトチを煮て食べるのが主食になったと考えられます。縄文後期の第2波の渡来では陸稲・豆類・里芋の持込で雑穀や芋を煮て食べる文化が入り、弥生時代初期の第3波の渡来で水稲技術が持ち込まれ、雑穀米を煮たり蒸したりして食べる文化となりました。
 この間、主食は一貫して火食であり、野草や野菜も煮て食べていたことでしょう。どれだけかの動物食も煮たり焼いたりしていたに違いありません。
 米作が大きく広がった弥生後期以降は穀類のうち米の占める割合が増えただけで、これといった食文化の変化はなく、その後、塩の流通で漬物文化が生じて野菜の一部を生で食べるようになったぐらいなもので、ほとんど火食し、これが戦後の食文化の欧米化前まで続いたのです。
 小生の子供の頃の記憶でも、昭和30年頃に生で食べる野菜は、塩漬や酢漬の野菜のほかは、夏限定のキュウリやトマトの塩振り、塩を振って作るナスもみ程度のものです。キャベツやニンジンは栽培していましたが生食した記憶はありませんし、レタスやサラダ菜はお目にかかったこともありませんでした。ただし、鶏を飼っていましたから、生卵は時折ご飯に掛けて食べていました。それ以外の生食は、夏のスイカ、メロン、秋の柿といった果物類だけです。

 日本人の食文化で、特徴的な生食は、魚を刺身にして食べ、刺身のツマとして生野菜を食べることです。ここで注目したいのは、「生肉+生野菜」の組み合わせです。
 なぜ刺身にツマがついてくるのか。
 殺菌効果だとか何だとか、もっともらしい説明がなされていますが、ようするにこれは、単に“何となく一緒に食べたくなる”ということではないでしょうか。
 話を全く別のところに振りますが、チンパンジーは時折狩猟をして動物を食べます。彼らの食性は、主食が果物で、果物が十分に手に入らないときは、木の葉っぱを少々食べたりします。それが、狩猟するときは、たいてい食糧が豊富なときで木の葉っぱなんぞ食べる必要がない状態にあるのですが、動物の肉・内臓・脳味噌を食べるとき、必ず木の葉っぱも食べるのです。日本人の刺身の食べ方と同様に「生肉+生野菜」の組み合わせとなるのです。これも“何となく一緒に食べたくなる”ということではないでしょうか。
 肉食中心の西欧人の食文化も同様なことになりましょう。日本人と違って肉は完全に火を通すことなく、半分生の状態で食べるのが普通です。そして、生野菜のサラダをぱくぱく食べます。これも“何となく一緒に食べたくなる”ということでしょう。

 こうしてみますと、「生肉+生野菜」の組み合わせは必須ということになりましょう。
 どうして、そういうことになるのか。
 日本人の野菜の食べ方として、「野菜によってはアクが強いから、水に浸したしたり、湯がいて煮汁を捨てる」という料理法がけっこう多いです。そのアクは、たいていポリフェノールなどのフィトケミカルのようですが、アルカロイドの場合もあります。今日では、これらは重要視されていますが、昔の日本人には不要であったことでしょう。
 一方の生肉ですが、こちらは正体不明なるものの何らかのアクが含まれているのではないでしょうか。だから、日本人は、肉は完全に火を通してアクを殺して食べる、ということになると思われるのです。加えて、肉を煮込んで前処理する場合には、鍋に浮いたアクをすくって捨てるという調理法を取ったりします。
 アクは何もかも捨てることを大前提とする日本料理、そう言えましょう。
 そして、少々飛躍するのですが、生肉も生野菜も、そのアクは別物ではあるものの、「生肉のアクを、生野菜のアクでもって打ち消す」ということになりはしないか、小生にはそのように思われてしかたないです。
 この「生肉+生野菜」の組み合わせの発展系として、日本人は火を通した肉を食べるときにも、まだ肉のアクが残っているのでしょうか、生野菜を一緒に食べるという食習慣が身に付いているように思われます。
 一つは洋風朝食の「ハムエッグ+生野菜」です。もう一つは「焼き肉+チマサンチュ(サラダ菜)」で、韓国で普及していますが、これは駐韓日本人が生み出した食文化です。

 ところが、生野菜は体にいいという社会通念がまかり通っているのでしょう。やたらと生野菜が食卓にのぼります。昨日は温泉宿で朝食を摂ったのですが、和風料理であって、肉と言えるものは小さな鮎の一夜干しを焼いたものしかないのにもかかわらず、野菜サラダが付いてきました。日本中の旅館は皆そうしたものです。こうした料理では、ちっとも食べたくない野菜サラダです。朝食に飛騨牛のステーキでも出てこないことには野菜サラダなんて食べたくならないのです。よって、ホウ葉味噌(飛騨地方特有の料理で、ホウの葉の上に味噌を乗せ、これをコンロに乗せ、個体燃料で焼く。味噌に刻みネギが乗っている)に生野菜を混ぜ込んで、味噌煮の形にしていただいたところです。

 食文化というものは、長い長い歴史の積み重ねのなかから培われてきたものです。そのときそのときに入ってきた新たな食材をどう調理し、他の食材にどの程度加えるか、そして食べる量はいかほどがいいか、これが試行錯誤するなかで、ほど良い状態を見出してきたのです。
 そのときに発揮される最大の物差しは何と言っても味覚でしょう。現代においては、栄養があるとか、体にいいとかといった科学的根拠でもって語られることが多いのですが、科学的根拠なるものは往々にして覆される性質のものであり、あてになりません。
 動物の舌は鋭い味覚感覚を持っています。主に毒か否かを見極めるために使っていますが、ヒトという種は不思議なことに多くの毒に耐性を持っていて、その味覚感覚は今ではもっぱら美味しいかどうかを判断するために使われていますが、その昔は体にいいかどうかを無意識的に発揮していたように思われます。
 ですから、昔ながらの日本料理、家庭料理ではおふくろの味と言われるものが、日本人にとって最善の健康料理となるのでしょう。
 そして、戦後の獣肉の大幅な普及にあたっては、これもヒトが本来持ち備えている味覚感覚でもって、生野菜を一緒に摂る、という食習慣が定着してきていると思われます。

 焼き肉屋へはここ20年来とんと行ったことがない小生ですが、焼き肉をぱくぱく食べるのであれば、駐韓日本人が一昔前に編み出した食文化「焼き肉にチマサンチュ(サラダ菜)を巻いて食べる」のがよろしいのではないでしょうか。
 ひょっとして我が家でも焼き肉をやることもあろうと、毎年畑にチマサンチュを1畝作付けしているのですが、本来の食べ方は年に1回程度しかなく、多くはゆでて味噌和えにしたりおひたしにしたりという火食の和風料理仕立てにしてしまう我家です。肉はほんの少々使うだけで、それも野菜と一緒に炒め物や煮物にしてしまいますから、そうした料理に生のチマサンチュを添えても全く合わない、かえって生のチマサンチュのアクが体に良くない、そう味覚が教えてくれているような気がします。

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夏の土用にご用心あれ [ファーマシーの食養]

 土用は、各季節の変わり目を指し、年に4回訪れます。
 中医学(漢方)では、このように季節区分がなされているのですが、梅雨のない中国の中心部では、これでピッタシなんでしょうね。夏の土用の入りとなる7月19日頃は、夏至からすでに約1か月経ち、日が昇るのが遅くなり、沈むのも早くなるのですから、秋へ移らんとする季節だと。
 でも、24節季の大暑が7月23日頃で、暑さのピークとされている上に、日本では、この頃に梅雨明けとなり、猛暑となります。特に、梅雨明け後の10日間は、高温多湿の酷暑。
 ここに、中国と日本とで、年平均気温が同じぐらいの地域であっても、夏の土用の季節感は、全く異質なものとなります。
 ところで、土用は、たいていは「土」に「用」がある時期でして、つまり、耕地を掘り返すことが多くなります。小生の百姓生活の経験から、そのように思われます。
 なぜに季節の変わり目を土用と言うのか、それを明確に解説されたものを見かけないのですが、土用は「土を掘り返すことで湿気を多く浴びることが多い時期であるから、体調に注意しなければならない」との言い伝えがあります。
 また、「土用の期間中は、土の中に神様がいるから、毎日土を掘り返してはならぬ。定められた特定の日にしなさい。」という習慣もあるようです。これは、上の言い伝えと同義でしょう。
 よって、こうしたことから、小生思うに、24節季なり、季節区分や土用の設定は、そもそも農業暦から来ているのですから、「土」に「用」があるから「土用」なのだと思って良いのではないでしょうか。そして、土用に注意すべきことは「湿気」であると。

 ここまで述べてきたことは、別立てブログで書いた次の記事の冒頭の要約です。少々長文ですが、食養生など書いておりますのでご覧になってください。
夏の土用の入りに何を食べますか。まずは、「体の中の水害を防ぐ」ことから。

ハウス栽培の野菜は食べちゃいけない [ファーマシーの食養]

 新谷弘美著「病気にならない生き方 ミラクル・エンザイムが寿命を決める」から引用し、「日本列島の土壌は痩せているから野菜のビタミン・ミネラルも少ない」を先に記事にしました。
 新谷氏は、日本の野菜の問題点の一つとして、ハウス栽培にも触れておられますので、それも紹介することにします。(以下、引用)

 …日本各地で見られるハウス栽培は日本独特のものでアメリカにはありません。ハウスを用いる目的は、害虫被害の軽減と室温管理ですが、ビニールによって太陽光線を遮断するデメリットがあることはあまり知られていません。もともと植物というのは、動物のように動き回ることはできません。そのため多量の紫外線にさらされます。紫外線は動植物に強いフリーラジカルを受けさせ酸化を促進させるので、植物みずからの身を守るために抗酸化物質を体内に多量に作り出せる仕組みを備えています。それが植物に多く含まれるビタミンA・C・Eなどのビタミン類や、フラボノイド、イソフラボン、カキテンなどのポリフェノールなのです。
 こうした抗酸化物質は植物が紫外線を受けたときに作り出されます。つまり、ビニールなどで太陽光線を遮断してしまうと、植物に降り注ぐ紫外線が減り、結果としてビタミンやポリフェノールなどの抗酸化物質の含有量が減ってしまうのです。
 いまの日本の農業は、栄養価よりも見映えのよいものを作ることが優先されてしまっています。自然の中で育った野菜というものは、虫食い穴があったり、形に大小があったりと、本当はそれほど見映えのよいものではありません。でもそのぶん、「エネルギー」を備えています。…
 私たちは食べ物からエネルギーをもらっているのですから、その食べ物自体にエネルギーがなければ、いくら食べても健康にはなれません。自然な環境で育った食べ物を食べない人間が、自然の中で強く健康に生きていけるはずがないのです。(引用ここまで)

 引用文中には、紫外線でできるものの例示にビタミンとポリフェノールしか上げられていませんが、他に重要なものとしてテルペノイドがあります。これは馴染みのない言葉ですが、この中にカロチノイド(カロテノイド)が含まれ、これに属する主なものとして、カロチン(カロテン)・ルテイン・リコペンがあげられます。さらには、フェノール酸としてクロロゲン酸( コーヒーに含有)、フェニルプロパノイドとしてセサミノール(セサミン)、シゲトン類としてクルクミンなどもあり、これらビタミン以外のものを総称してフィトケミカルといいます。そのいずれもが抗酸化作用を持っています。
 なお、フィトケミカルは西洋科学で「通常の身体機能維持には必要としないが、健康上良い影響を与える植物由来の有機化合物」と定義されるのに対して、東洋医学では、フィトケミカルに相当するものは「身体機能の維持のみならず、その向上に必要不可欠なものであって、健康のためになくてはならない植物がもたらしてくれる数々の恵みのうちの一つ」と定義される性質のものです。
 いかがでしょうか。もっと言えば、植物は紫外線を受けて各種のアルカロイド(一般に毒となるもの)を大なり小なり作って、大食する動物から身を守っているのですが、これが過剰摂取でなければ動物の薬になっているのですから、植物から受ける恵みは絶大です。
 また、間接的にもたらされる恵みとして、植物の表面にびっしりと張り付いている共生細菌群があげられます。この細菌群は、酵素たっぷり、酵素生成物たっぷりと言ってよいでしょう。
 ビタミンからはじまって、こうしたもの全部がお日様の紫外線なくして生れ出ないものなのです。
 ハウスものではなく、露地ものが求められるのは、こうしたことによります。

 さて、本稿を起こした元は、当店店内の天井の縁近くを這って這って這いまくってくれていたポトスが枯れてしまったからです。
 ポトスは、蛍光灯の光線を受けて数年で約13mにも伸びてくれました。
    株元↓                     下の写真に続く →
DSCN0099.JPG

→上の写真より               もう少し先まで伸びていた
DSCN0100.JPG

 しかし、2年近く前に蛍光管をLEDに取り替えたところ、話には聞いていましたが、可視光線は変わらないものの紫外線が出なくなりました。
 この切り替えによって、ポトスはだんだん元気がなくなり、少しずつ葉が枯れていき、枯れた葉は以前は茶色であったものが病原菌におかされてか黒色となり、いかにも苦しそうに思えました。
 LEDにしたことで電気代の大幅節減になり、5年で設備投資はペイできるのですが、ポトス君には申し訳ないことをしたなと悔やんでいます。
 光合成は可視光線でできても、植物が生きていくには、紫外線が当たることによってはじめてフィトケミカルやアルカロイドが作られ、これなくして植物も生きていけないことをまざまざと思い知らされたところです。
 そうしたことから、少々オーバーな表現ですが、表題を「ハウス栽培の野菜は食べちゃいけない」とした次第です。

朝飯・昼飯抜きで丸一日畑仕事ができますよ! [ファーマシーの食養]

 so-netブログの良いところは、「コピーして新規作成」ができることで、この記事も昨年2月に書いた記事をそうして部分修正し、投稿した次第です。
 農作業となると大半が毎年繰り返しとなりますから、誠に便利です。

 さて、小生が農作業を行なうのは、たいていは店が定休日の日曜日ですが、たまには暇そうな日を選んで営業日にも農作業をします。やるとなると、あれこれ溜まっていますから、一日仕事になることが多いです。

 そして、朝食・昼食抜きで、丸一日畑仕事をすることになります。
 前にも書きましたが、ここ10年近く「朝飯・昼飯抜きの1日1食の生活、そして時々断食」。そうした食生活をしていますから、朝から力仕事をやっても腹が減ったなどという感覚は全く生じません。
 
 1日1食の生活は、いきなりではなく、まずは朝食を順次減らしてゼロにし、次に昼食を、といった具合で2、3年がかりで持っていきましたが、何の苦もなくできるようになりました。
 して、その御利益は。
 仕事の段取りがスムーズに運んで効率がいいこと、この上なし。おまけに頭は冴えるし、すこぶる健康になったことです。
 空腹感を全く感じなくなり、1日断食を組み込んでも空腹感が出てくることはありません。そして、“腹が減った”という感覚は、どんなだったかのか?半分忘れてしまっています。何とも不思議な現象が体の中で起きているのです。

 特に、農作業にはもってこいの1日1食です。この時期は、まだ寒いですから、作業開始は10時頃となり、着手して一区切りできるのは12時過ぎになることが往々にしてあります。これを中断して昼食を取るとなると、食後直ぐには動けませんから、1時間ほど時間が無駄になります。
 連続して作業し、一区切りできたら、小休止。直ぐに次の作業に移れます。
 夏はどうかと言うと、朝のうちの作業となりますから、朝飯抜きで畑へ飛んで行き、暑くなる10時頃まで4、5時間、小休止を挟んで連続的に作業ができ、それが終わっても腹が減ることはありませんから、晩飯まで何も食べなくてもどってことありません。

 唯一つ難点は、仕事が捗りすぎて、丸一日農作業すると筋肉疲労でバテバテになることです。還暦過ぎの体ですから、筋肉が着いていけなくなっていますからね。

 「朝食抜き」あるいは「1日1食」についての詳細は、小生の別立てブログ「薬屋の…」の中で詳しく紹介していますのでご覧になってください。皆さんにもおすすめしたい健康法です。
下記をクリック ↓
http://blog.goo.ne.jp/miyakekazutoyo230910/c/e1d6c32605040c8f96d6825f19b6105a
(カテゴリー:「朝食抜き、断食で健康」 今、15本の記事があります。)

1日1食で楽々農作業をこなす [ファーマシーの食養]

 小生、朝食・昼食抜きの1日1食生活を始めて10年近くになります。
 このことについては、過去に記事にしましたが、あらためて書くことにします。

 1日1食生活にした切っ掛けは、こうすることによって朝飯や昼飯で仕事を中断させられたり、食後の休憩というものが必要がなくなり、作業効率がとても良くなるからです。
 そして、こうした生活に慣れてしまうと、夜になっても空腹感は全く生じなくなります。必要なエネルギーは、体内脂肪をスムーズに分解してブドウ糖やケトン体を作り出し、これでもって十分に賄えますから、燃料切れにならないのです。よって、血糖値が下がりすぎて生ずる空腹感も起こりえないのです。
 これが1日3食も摂っていると、ブドウ糖が絶えず血液に入り込むものですから、体内脂肪やグリコーゲンをブドウ糖などに変換する機能が錆び付いてしまっていて、つまり「エネルギー変換失調症」になっていて、1食抜こうものなら、途端に激しい空腹感に襲われるようになるのです。

 小生の今日の生活は、朝食抜きで店の開店準備をし、急ぎの仕事を済ませた後、畑へ行って冬野菜の土寄せや収穫をし、それが終わったのが午後2時半で昼食抜きです。まだまだ余力を残しており、空腹感も全く感じません。どってことなしです。
 
 皆さんは、“朝食を抜くなんて、おまけに昼食まで抜いてしまうなんて、絶対に体に悪い”とお思いでしょうが、決してそうではありません。真逆です。
 その説明は、小生の別立てブログで詳細に述べていますので、一度ご覧になってください。左サイドバーの「読んでいるブログ」の中の「薬屋のおやじのボヤキ」をクリックし、開いたら、そのブログのサイドバーのカテゴリー「朝食抜き・断食で健康」をクリック。その中の幾つかの記事で、「朝食抜き1日2食」・「1日1食」・「断食」によって健康になれることを、実体験を元にし、何人かの学者の解説などを書いています。

生命力のないF1(交配)種子で作られる野菜 [ファーマシーの食養]

 市場に出回っている果物、柿やリンゴは年に何度も消毒して、つまり農薬散布しないことには、樹木の免疫力がないから、病害虫にやられてしまい、実が生らない。また、苗屋から買ったイチゴ苗も自分で苗作りを重ねると数年で病気が出てしまい、苗を買い直さねばならない。
 こうしたことについては、このブログでも書きました。
 野菜についてはどうか。ひ弱さは果樹と同様で、消毒なしでは思ったように収量を上げられないものが多いです。その繰り返しをしていれば、野菜の免疫力がどんどん落ちて消毒が不可欠になりましょう。今日市場に出回っている野菜はそうした野菜です。
 でも、もっと驚いたことがあります。それはF1(交配)種子です。これを知ったのは、野草料理のベテランで75歳になられる若杉友子女史が書かれた「体温を上げる料理教室」です。その本の40~41ページに次のように書かれています。

 F1種子は生命力のない危険な種
 F1種子というのはハイブリッド品種とも言うけれど、種が科学によって人工的に操作された一代交配、つまり命が一代限りで次世代へ続いていかない種のことを言います。昔の種というのは、たとえば大根なら大根を作ったときに、その中の一番いいものから採った種でした。だから、すごくいい子種を残したの。
 人間や他の生物も同じだけれど、いい種を次世代に残していかないと必ず廃れてしまいます。だから、種はちゃんと未来に続くものでないといけないのに、F1種子は一年こっきりの命で、そこから種をとって次の命を育てることができないんです。
 私も一度種をもらって大豆を育ててみたことがあるけれど、初めは茎も葉もぐんぐん育って「すごいな」と思いました。でも、そのうち幽霊のようなぼんやりした花がついたはいいが、なかなか莢(さや)や実はつかない。ようやく莢がついたと思ったら、豆のないペッタンコな大豆ができました。あのときは腰を抜かすほど驚いた。要するに命が宿っていないわけね。調べてみると、今は日本のほとんどの農家がF1の種を使っていることがわかった。
 ばあちゃんは以前、料理教室のとき野菜は自分で作ったものを使っていたけど、足らない分は農家から仕入れていたの。その購入先の有機栽培農家に足を運んで、「種は買っているんですか?」と聞いたら「メーカーから買っているよ」って。ほとんどの農家は季節ごとに育苗会社から種を買って育てているんだね。しかも、日本で売られている種の9割以上が輸入されたもので、そのほとんどがF1種子。これらは種子消毒されているから、余計に危ない。
 今は日本に限らず、世界中の民族がF1の種を握らされているんですよ。そんなものを食べ続けて元気になるはずがないでしょう。野菜は種から考えないとね。今からでもいいから、種をとらなくてはだめ。草の根運動で在来種を世の中に普及させようとしている種屋さんもいるから探してみてね。私も、私の娘たちも、そういう人たちから種を買って種を増やしているのよ。種を大切にしないと日本は大変なことになりますよ。(引用ここまで)

 いかがでしたでしょうか。農薬散布しなきゃ育たないし、育ってもちゃんとした種を作れない今日の野菜です。生命力が全くない野菜です。こうした野菜にも、ビタミンやミネラルそして抗酸化物質が含まれていますが、各種栄養素だけでは語れないのが“生き物”である野菜です。例えば、体を温めたり冷やしたり、滋養強壮力を持ち備えたり、薬としての効果があったり、などなど、本来の野菜の生命力は驚くほどのものがあります。
 それが、F1種子で育った野菜となると、各種栄養素以外のそうした効果は、どれだけも期待できそうにありません。恐ろしい世の中になったものです。
 F1種子のメリットは、大きくて見た目に良く、野菜臭さがなくて万人向けし、かつ収量を上げられるという、栽培農家のために唯一銭儲けだけを考えて作られた種です。そして、次世代にまともな種を残せないのですから、F1種子を開発した会社も確実に儲かります。
 これが資本主義経済の特徴で、企業が発展する方向へ何もかも動いていくのです。業を企(たくら)み、企(くわだ)てることが正しい道とされるのですから、当然にこのようなことになってしまうのです。
 そうした生命力のない野菜ばかりを食べでいると、ひ弱で虚弱な体になってしまいます。でも、野菜がダメだから魚や肉そして卵に牛乳を食べればよい、では決してないです。これらは、野菜より問題があり、並べた順番で順次悪さがひどくなります。
 
 食べて良いものがほとんどなくなってしまう今の世の中。在来の野菜をまず大事にしなきゃいかんですね。
 うちで昔から種を自家採取している野菜(これを「固定種」といいます)は、特産品の徳田ねぎ、十六豆、エンドウ、里芋(種芋取り)です。最近栽培しだしたもので種取りしているものは、白ナス、ゴーヤ、オクラ、晩生大豆、ヤーコン(種芋取り)です。
 考えてみると、これらは皆、丈夫いです。ほとんど農薬なしで育ちます。ただし、白ナスは梅雨明け以降に芽や花に病害虫が入り込みがちですので、芽や花に農薬散布を数度しますが。また、オクラにはどうしても葉食い虫が付きますが、小まめに手で潰してやれば何とかなります。
 それに比べて、例えば夏野菜のキュウリ、トマト、紫ナス、ピーマンの弱いことと言ったら情けなくなります。キュウリは何とか育つものの、他は苦労させられます。メリットと言ったら、うちでは望ましくないのですが、定植したら短期間で収穫が始まることです。もう実が生るの!とびっくりさせられます。夏野菜は夏本番に食べて美味しいのですが、ゴールデンウイークに作付けしたものは、梅雨明けとともに終わってしまうものが多いです。そんなに急いでどうするの?ですが、業を企(たくら)み、企(くわだ)てるとなれば、これが望ましいのでしょうね。
 そんなわけで、買った種なり買った苗で、時差収穫するために遅蒔き、遅植えし、真夏に収穫最盛期を目論むようにしている昨今です。

 これからの野菜作りは、無農薬有機栽培を売り物にするだけではダメで、“自分ちで種取りして育てた元気な野菜”をキャッチフレーズにしていかなきゃいかんでしょうね。
 それでもって、初めて本物の野菜となり、つまり“生き物”である野菜となって、人間の滋養強壮に役立ってくれることになります。
 そうした野菜作りを続けていこうと、気持ちを新たにしたことろです。皆さんにもご一読をお勧めします、若杉友子著「体温を上げる料理教室」(平成23年8月31日発刊、致知出版社、1400円+税)。

 (追記)
 小生は、最近、種を買うなら極力「野口のタネ」でネット購入しています。ここは、F1種子は取り扱わず、固定種の種子しか売っていないです。そして、その種で育った野菜から種を自家採取すると、2、3年でその土地の気候・土壌に馴染んでくれ、丈夫で収量の多い野菜が毎年育つようになるようです。ですが、種取りはかなりの労力を要しますので、小生は、まだ、そこまではしていませんが。 
 

酵素=発酵生成物は植物にもヒトにも良い [ファーマシーの食養]

 冬野菜の大根(小型のビタミン大根)、イチゴ苗、プランターのパンジー、ジュリアンなどに噴霧した「万田酵素」です。ある程度の効果がありましたので、夏野菜にも、これを噴霧することにしました。
 ポット苗の段階の、トマト、ナス、ピーマン、オクラ、ゴーヤそして大量に作ったヤーコンなど、5月上旬に噴霧しました。すでに、定植してあるキュウリなどにも。さらに、プランターに入れたベゴニア、ペチュニアなどにも。
 苗の段階ですと、どれだけも要りませんから、小さな霧吹き器でも足りてしまいます。「万田酵素」は、1000倍に薄めて使うのですから、500ミリリットルの容器には0.5ミリリットル入れるだけになります。これを計り取るのは不可能です。でも、秋に作ったときの色を記憶・・・還暦を過ぎて物忘れが酷くなっているものの、なぜか色だけはしっかり記憶・・・していましたから、そのときの色になるよう調整します。
 「万田酵素」は、まだ使い慣れていませんから、500倍に薄めたものでも構わないと思うものの、弱々しい苗に与えるのですから、濃すぎてはダメージが出るのではないかと心配になり、慎重になります。
 さて、この「万田酵素」は、種が芽吹いて直ぐに与えると効果が高いようですから、遅植え用に準備しているトマトの種が芽吹いた1週間後に噴霧しました。定植するまでに、もう2回噴霧する予定です。
 なお、畑に定植したものにも、6月上旬には、再度噴霧しようと考えています。
 “野菜を元気に育ててくれる「万田酵素」”、期待したいです。
(後日追記:効果があったのかなかったのか、よくわかりませんでした。)

  久し振りになりますが、ここで、ファーマーではなく、ファーマシーの立場から、酵素について解説しておきましょう。
 酵素は、随分前から静かなブームになっていて、健康のために酵素飲料などを飲んでおられる方がけっこういらっしゃいます。
 でも、酵素といっても、この言葉は様々な使われ方がしていまして、酵素そのもの(植物の酵素もあれば、ヒトの体内で作られるものもあります)だけではなく、酵素による生成物までも酵素と言ったりします。
 学術的に言う酵素は、生体内で行なわれる化学反応を進めたり止めたりする、触媒機能を有する有機化合物のことです。
 触媒とはどんなものかは、皆さん、ご存知でしょうが、おさらいをしておきましょう。中学校の理科の実験で、過酸化水素水の中に二酸化マンガン入れると、ブクブク泡が出て、その泡を集めると、それは酸素だったというものです。この場合、二酸化マンガンが触媒として働いたのでしたね。
 植物や動物の生体内においても、マンガンをはじめ、各種金属などミネラルが触媒の機能を担っています。ただし、二酸化マンガンといった無機物ではなくて、各種金属などミネラルの1個の元素を有機化合物が取り巻く形の酵素と呼ばれるものが触媒の働きをしています。これが、一般的な酵素の形です。
 酵素は、生体を構成する各細胞の中に様々な種類のものがあり、これは野菜なり肉なり食べ物として口から入ります。しかし、胃や腸で消化されますから、酵素も消化されて、機能を失い、原形を留めることはありません。よって、酵素たっぷりの食品を摂ったからといって、その酵素が体内で使われることはないです。
 さて、酵素をたっぷり持っている生き物というと、それは酵母菌であり、腸内細菌です。これらの菌に栄養物を与えて培養してやると、栄養物を発酵させ、各種の発酵生成物ができます。アルコールを作ってしまう変り種のものもありますが、最終的には必須アミノ酸を作るものが多いです。
 その発酵過程では、様々な種類の有機化合物ができるのですが、それを口に入れたとき、それぞれが、どのような効果を人に与えるのかは、まだ分からないものが多く、また幾つかで相乗効果を発揮することもあるようです。そうした発酵生成物を通常「酵素飲料」と言っています。
 これを人が飲むと、様々な健康効果が出ることが多いですから、愛飲されているのです。これは、人のみならず動物が飲んでも同じ効果が期待できましょうし、植物とて生き物ですから、微生物が作った発酵生成物は植物にも有用なものとなるのは、当然のことでしょう。そもそも、生きた植物体の表面には、酵母菌などがビッシリ張り付いていますから、そのように考えることができるのです。
 その酵母菌、我々も良く目にします。例えば、ブドウ。表面を指で擦れば色が変わります。酵母菌が擦り取られたからです。この酵母菌でぶどう酒が造られるのです。キュウリも採れたてのものを擦れば、少し色が変わります。これも酵母菌。漬物にすると、この酵母が働いて美味しくなります。キャベツも畑にある状態ですと、外側の葉は白っぽい粉を吹いたように見えますが、これも酵母菌で、決して農薬がかかっているわけではありません。随分前のことですが、キャベツをお客様に差し上げたとき、外側の葉をあまり剥かずに差し上げたら、農薬と勘違いされてしまいました。
 どんな野菜、果物も採れたては、このような姿をしています。これでは、見た目に悪いことが多いですから、擦り取ったり、洗ったりして、酵母菌を取ってしまうことが多くなります。
 あれあれ、いつの間にか、ファーマシーからファーマーに変わってしまいました。やっぱり、ファーマーは楽しい仕事ですね。
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